都営霊園(都立霊園)での墓じまいは、お寺の墓じまいと異なり、離檀料が発生せず、住職との交渉も不要です。公営墓地ならではのシンプルな進め方で、比較的段取りをつけやすいのが特徴です。
とはいえ、「改葬許可申請」「石材店の手配」「区画の原状回復」といった手続きは、お寺の墓じまいと同様に必要です。「都営霊園だから手続きが簡単」と思い込んで準備不足になってしまうケースもあるため、流れと費用をしっかり把握した上で進めることが大切です。
この記事では、都営霊園での墓じまいの手続きの流れ・費用の目安・都立霊園限定の「施設変更制度」について、わかりやすく解説します。
墓じまい全体の流れについては、墓じまい完全ガイドもあわせてご覧ください。
都営霊園の墓じまいとはどういうものか
都営霊園(都立霊園)は、東京都が設置し、公益財団法人東京都公園協会が管理・運営する公営の墓地です。青山・谷中・雑司ケ谷・染井・多磨・八柱・小平・八王子の計8か所があり、宗教・宗派を問わず利用できることが大きな特徴です。
お寺の檀家墓地とは異なり、都営霊園は「区画の永代使用権」を自治体から取得する形式のため、特定の宗教団体との関係は生じません。そのため、墓じまいをする際に離檀料を支払う必要はなく、住職との交渉もまったく不要です。
一方で、改葬(遺骨を別の場所に移す)に関わる行政手続きや石材店の手配、区画を元通りに戻す原状回復義務は、お寺の墓じまいと変わらずあります。「離檀がない分、手続き全体がラクになる」わけではない点は、あらかじめ把握しておきましょう。

離檀交渉がない分だけ、精神的・金銭的な負担は軽くなります。ただし「改葬許可申請・石材撤去・原状回復」の3点はいずれも自分で進める必要があります。各工程に時間と費用がかかることを念頭に置いて準備を始めましょう。
都営霊園の墓じまいの流れ(5ステップ)
都営霊園での墓じまいは、大きく分けて5つのステップで進みます。準備から完了まで、早くて3〜6か月、書類の手配や供養先選びに時間がかかる場合は1年程度かかることもあります。余裕を持って動き出すことが大切です。

ステップ1|親族と話し合い、合意を得る
墓じまいは、お墓に関わるすべての親族に影響する決断です。特に、遺骨の行き先(改葬先)については、関係する親族全員と事前に話し合い、合意を得ておくことが非常に重要です。後から「聞いていなかった」「反対だった」というトラブルを防ぐためにも、早めに相談しておきましょう。
親族の理解を得るのが大変でした。
墓じまい経験者 千葉県・69歳・男性
ステップ2|都営霊園の管理事務所に連絡・相談する
親族の合意が取れたら、まず墓所がある都営霊園の管理事務所に連絡します。「墓じまいを検討している」と伝えると、返還手続きに必要な書類や手順を案内してもらえます。
管理事務所では次の書類を発行してもらえます。
- 埋蔵証明書(改葬許可申請に必要)
- 墓地使用権返還に関する書類
管理料(年間使用料)に滞納がある場合は、この時点で精算を求められます。事前に確認しておくと安心です。

ステップ3|新しい供養先を決める
改葬許可を申請するには、新しい供養先(改葬先)が発行する「受入証明書」が必要です。つまり、移転先が決まっていないと正式な手続きを進めることができません。
主な改葬先の選択肢としては、以下のものがあります。
- 永代供養墓:寺院・霊園が永代にわたって供養・管理してくれる
- 納骨堂:屋内施設に遺骨を収蔵する
- 樹木葬:樹木を墓標とした自然葬
- 散骨:粉骨して海・山などに散布する(受入証明書不要の場合あり)
「都立霊園内の合葬墓に移転する」という選択肢(施設変更制度)もあります。詳しくは後のセクションで説明します。
ステップ4|石材店に墓石の撤去を依頼する
墓石の撤去・解体工事は石材店に依頼します。都営霊園は返還時に区画を更地に戻す原状回復義務があるため、墓石の撤去だけでなく、基礎コンクリートの除去・整地まで含めた工事が必要です。
費用は石材の大きさや区画面積によって変わります。複数の石材店から見積もりを取り、内容と金額を比較した上で依頼先を決めましょう。
なお、都営霊園によっては工事に関するルール(搬入経路・作業時間など)が定められている場合があります。管理事務所に確認してから石材店に依頼すると、手戻りを防げます。
ステップ5|改葬許可申請を行い、遺骨を新しい供養先へ
以下の書類を揃えて、改葬先の市区町村役所に「改葬許可申請書」を提出します。
書類 | 入手先 |
|---|---|
改葬許可申請書 | 改葬先の市区町村役所 |
埋蔵証明書 | 都営霊園の管理事務所 |
受入証明書 | 新しい供養先 |
申請後に「改葬許可証」が発行されます。この許可証を改葬先に提出することで、正式に遺骨を納骨できます。
書類の記載漏れや不備があると、役所に何度も足を運ぶことになります。事前に必要事項をしっかり確認してから申請しましょう。
手続きの面倒さがあり書類不備などで何度も足を運んでいた
墓じまい経験者 奈良県・54歳・女性
都営霊園の墓じまいにかかる費用
都営霊園の墓じまいにかかる費用は、状況によって差がありますが、総額で30〜150万円程度が目安です。費用の大部分を占めるのは石材の撤去・解体工事費で、区画の大きさや石材の量によって金額が変わります。
石材撤去・解体費用(10〜40万円)
費用の中でも最も大きな割合を占めるのが、石材店に支払う工事費用です。墓石の解体・撤去に加え、基礎コンクリートの除去・土の整地(原状回復)まで含まれます。
費用の目安は10〜40万円程度ですが、区画が広かったり石材が多かったりするとさらに高くなる場合もあります。見積もりを複数の石材店から取ることで、費用の相場感をつかみやすくなります。

改葬手続き費用(数千円〜1万円程度)
改葬許可申請に必要な書類の取得手数料や郵送費など、行政手続きにかかる費用です。市区町村によって金額は異なりますが、数千円〜1万円程度で収まることがほとんどです。手続き自体は費用が大きくかかるわけではありませんが、書類を揃えるための手間と時間はかかります。
新しい供養先への納骨費用(数万〜数十万円)
改葬先として選ぶ供養方法によって費用は大きく変わります。
供養方法 | 費用の目安 |
|---|---|
永代供養墓(合祀) | 3〜20万円程度 |
永代供養墓(個別安置) | 30〜100万円程度 |
納骨堂 | 20〜100万円程度 |
樹木葬 | 10〜70万円程度 |
供養先によって費用の幅が広いため、複数の施設を比較検討した上で決めることをおすすめします。
費用を抑えるためのポイント
- 石材店は複数社から相見積もりを取る
- 都立霊園の「施設変更制度」を利用すると、合葬墓への移転費用を抑えられる場合がある(詳細は次のセクションで解説)
- 供養先によっては交通費・お布施なども発生するため、総合的に比較する
都立霊園だけが使える「施設変更制度」
都立霊園を利用中の方に向けた独自の制度として、施設変更制度があります。現在使用している一般墓所を返還し、同じ都立霊園内にある合葬埋蔵施設(合葬墓)に遺骨を移すことができる制度です。
運営は公益財団法人東京都公園協会が行っており、申し込みは年に数回(5月・8月・10月頃が目安)受け付けています。ただし空き状況によって募集が停止される場合もあるため、最新の募集情報は東京都公園協会の公式サイトで確認してください。

施設変更制度のメリット
通常、合葬埋蔵施設を利用する場合は1体あたり64,000円程度の使用料がかかります。しかし、この制度を利用すると使用料が無料になります。以降の管理料(年間使用料)も永年不要になるため、費用面での負担を大幅に抑えることができます。
また、改葬許可申請の手続きについても管理事務所がサポートしてくれるため、書類の準備で迷いにくいという点もメリットです。
こんな方に向いている制度
施設変更制度は、「都立霊園を使用中で後継者がいない方」「合葬墓でもかまわない方」「供養先の費用を抑えたい方」にとって特に有力な選択肢です。
逆に、「子や孫が後でお参りできるよう個別の供養先を確保したい」「特定のお寺や民間霊園に移したい」という場合は、この制度は使えません。ご自身の状況に合わせて判断してください。
都営霊園の墓じまいで注意したいこと
管理料(年間使用料)の滞納がある場合
都営霊園の使用には年間管理料の支払いが条件となっています。長期間滞納が続いている場合、霊園側から返還請求を受けることもあります。
墓じまいの手続きを始める前に、管理料の支払い状況を確認しておきましょう。滞納がある場合は、まず管理事務所に相談し、未払い分の精算方法について確認することをおすすめします。
石材店選びは慎重に
都営霊園での工事には、霊園ごとに搬入経路・作業時間・廃材処理などに関するルールが定められている場合があります。石材店に依頼する前に、管理事務所でルールを確認してから見積もりを依頼すると、後からトラブルになりにくいです。
また、費用や作業内容は業者によって差があります。複数の石材店から相見積もりを取り、工事内容と金額をしっかり比較した上で依頼先を決めましょう。
遠方にある都営霊園の場合
都立霊園は東京都内に8か所ありますが、使用者が遠方在住の場合、管理事務所への相談や書類の受け取りのために複数回足を運ぶ必要があることがあります。郵送対応ができる書類については事前に確認しておくと、移動の手間を減らすことができます。
手続きが複雑で不安な場合や、遠方からの対応が難しい場合は、墓じまい代行業者に相談する方法もあります。連絡・調整・書類手配のサポートを受けることで、負担を大幅に軽減できます。
早めに動き出すことが大切
「いつかやろう」と思いながら先延ばしにしていると、体力・気力が必要な手続きが後になるほど大変になります。また、施設変更制度など申請時期が決まっている選択肢を逃してしまうこともあります。
墓じまいを検討し始めたら、まず管理事務所に相談するだけでも一歩前進です。早めに動き出すことで、選択肢が広がり、余裕を持って準備を進めることができます。
本当に面倒くさいので、早めに計画して早めに実行することをお勧めします。
墓じまい経験者 茨城県・63歳・女性
よくある質問
都営霊園の墓じまいに離檀料はかかりますか?
かかりません。都営霊園は宗教法人ではなく、東京都が設置・運営する公営施設です。お寺の檀家関係がないため、離檀料は発生しません。ただし、年間管理料に滞納がある場合は、返還手続きの前に精算が必要です。
施設変更制度の申請はいつできますか?
年に数回(5月・8月・10月頃が目安)受け付けています。ただし空き状況によって募集が停止になる場合があり、利用できる霊園は小平・多磨・八柱の3か所のみです。最新の募集情報は公益財団法人東京都公園協会の公式サイトでご確認ください。
都営霊園の墓じまいはどのくらいの期間がかかりますか?
相談を始めてから完了するまで、早くて3〜6か月、供養先の選定や書類の手配に時間がかかる場合は1年程度かかることもあります。施設変更制度を利用する場合は、申請時期が年に数回しかないため、そのスケジュールに合わせて動く必要があります。余裕を持って準備を始めることをおすすめします。
石材店は自分で選べますか?
基本的には自分で石材店を選ぶことができます。ただし都営霊園によって、工事に関するルール(搬入経路・作業時間・廃材処理など)が定められている場合があります。石材店に依頼する前に、まず霊園の管理事務所に確認してから進めるとスムーズです。
都営霊園以外の公営墓地(市区町村立)でも手続きは同じですか?
基本的な流れ(改葬許可申請・石材撤去・原状回復)は同じです。ただし「施設変更制度」は都立霊園独自の制度であり、市区町村立の公営墓地には原則ありません。市区町村の公営墓地の場合は、各墓地の管理事務所に手続き方法を直接確認してください。
まとめ
都営霊園の墓じまいは、お寺の墓と比べて離檀料が不要・住職との交渉が不要という点で、費用面・精神面の負担が少ない進め方ができます。
ただし、以下の手続きはしっかりと必要です。
- 管理事務所への連絡・返還手続き
- 新しい供養先の決定と受入証明書の取得
- 改葬許可申請(役所での手続き)
- 石材店への工事依頼と原状回復
- 新しい供養先への納骨
また、後継者がいない方には都立霊園の施設変更制度という選択肢もあります。同霊園内の合葬墓に遺骨を移すことができ、通常かかる使用料(64,000円/体)が無料になります。ただし石材撤去費用は自己負担であることを忘れずに確認しておきましょう。
手続きは多岐にわたるため、「何から始めればいいかわからない」という方は、まず都営霊園の管理事務所に相談することから始めてください。管理事務所で必要な書類や流れを案内してもらえます。
それでも全体の段取りが不安な方は、墓じまい代行業者への相談も選択肢のひとつです。連絡調整・書類手配のサポートを受けながら、安心して手続きを進めることができます。
墓じまいは時間がかかる手続きです。「いつかやろう」と思い始めたら、まず一歩、動き出してみてください。






