公営墓地での墓じまいを検討しているものの、「何から手をつければいいのかわからない」「どのくらい費用がかかるのか見当がつかない」という方は多くいます。
公営墓地の場合、お寺の墓と異なり住職への離檀交渉が不要です。しかし、それ以外の手続き——改葬許可申請、必要書類の収集、石材店の手配、区画の原状回復(更地返却)——はお寺の墓と同様です。
この記事では、公営墓地の墓じまいの流れを8つのステップに分けて解説し、必要な書類・費用の目安・注意点をまとめています。都立霊園をご使用の方向けに「施設変更制度」の情報も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
墓じまい全体の流れについては、墓じまい完全ガイドもあわせてご覧ください。

公営墓地の墓じまいとは?お寺の墓との違い
公営墓地の特徴
公営墓地とは、都道府県や市区町村などの自治体が管理・運営する墓地のことです。代表的なものに東京都が運営する都立霊園(多磨霊園・青山霊園など)や、各市が運営する市営墓地があります。
公営墓地には以下のような特徴があります。宗教・宗派を問わず利用できるため、特定の寺院の檀家である必要がなく、どなたでも申し込めます(ただし自治体ごとに居住条件などの申込資格があります)。また毎年の管理料(年間使用料)を払い続けることが使用の条件で、長期間滞納が続くと自治体から区画の返還を求められる場合があります。使用許可を受けた際に「永代使用料」を一括で支払い、区画の永代使用権を取得しますが、これは土地の所有権ではなくあくまで使用する権利です。
お寺の墓との違いは「離檀交渉がない」こと
公営墓地の墓じまいがお寺の墓と異なる最大のポイントは、住職への離檀交渉が不要なことです。お寺の墓では、檀家関係の解消(離檀)について住職に相談し、理解・協力を得ながら進める必要があります。公営墓地にはその関係がないため、この部分の手間はありません。
ただし、それ以外の手続きはお寺の墓と共通しています。親族との合意、新しい供養先の決定と受入証明書の取得、役所での改葬許可申請、石材店の手配と墓石撤去工事、区画を更地に戻しての返却(原状回復)はいずれも必要です。埋蔵証明書の発行元が「寺院の住職」から「公営墓地の管理事務所(自治体)」に変わるという違いはありますが、必要な書類の種類や手続きの流れは基本的に同じです。
公営墓地の墓じまいの流れ(8ステップ)
公営墓地の墓じまいは、大きく8つのステップで進みます。手続き全体で3〜6か月かかるケースも多く、余裕を持って準備を進めることが大切です。

STEP1:親族に相談し、合意を得る
墓じまいはお墓にゆかりのある親族全員に関わる決断です。事前に十分な話し合いをせず進めると、後から反対意見が出てトラブルになることがあります。誰の遺骨が納められているかの確認も、この段階で行っておきましょう。
STEP2:新しい供養先を決める
墓じまいを進める前に、遺骨の新しい行き先を決めておく必要があります。なぜなら、次のSTEP4の改葬許可申請には受入証明書(新しい供養先が発行する書類)が必要で、供養先が決まっていないと申請を進められないからです。主な供養先の選択肢としては、永代供養墓・納骨堂・樹木葬・散骨などがあります。費用や管理の手間、お参りのしやすさを考慮して選びましょう。
STEP3:公営墓地の管理事務所に連絡する
墓地を管理する自治体の管理事務所(または担当窓口)に、返還の意向を伝えます。返還に必要な手続きの案内を受けるとともに、改葬許可申請に必要な埋蔵証明書の発行を依頼します。自治体によって手続きの詳細や書式が異なるため、まずは「墓じまいをしたい」と連絡し、流れを確認するところから始めましょう。
STEP4:役所で改葬許可申請を行う
現在の墓地がある市区町村の役所(住民課・環境課など担当部署は自治体によって異なります)に改葬許可申請を行います。必要書類を揃えて申請すると、改葬許可証が交付されます。必要な書類は、改葬許可申請書(役所窓口で入手)・埋蔵証明書(管理事務所から取得)・受入証明書(新しい供養先から取得)の3点が一般的です。書類の不備があると手続きが止まってしまうため、事前に役所に確認しながら準備を進めることをおすすめします。
手続きがややこしい、わからない事が多くて、時間がかかった
墓じまい経験者 大阪府・49歳・女性
越境して、県をまたいであったので役所の移動許可が煩わしかった
墓じまい経験者 愛知県・63歳・男性
現在の墓地と異なる都道府県に引越している場合など、複数の役所をまたぐケースでは手続きがより複雑になることがあります。わからないことは役所の担当窓口や専門業者に相談しながら進めましょう。
STEP5:石材店を手配する
墓石の解体・撤去を行う石材店を手配します。公営墓地によっては指定業者制度があり、指定された石材店しか工事できない場合があります。まず管理事務所に指定業者の有無を確認してください。指定がない場合は複数の石材店から相見積もりを取ることをおすすめします。石材の大きさや区画の状況によって費用が大きく変わるため、1社だけで決めず、複数社に見積もりを依頼しましょう。
STEP6:閉眼供養(魂抜き)を行う
墓石を撤去する前に、閉眼供養(魂抜き)を行います。お坊さんや神職に依頼し、遺骨を取り出す前にお墓に宿っている魂を抜いてもらう儀式です。公営墓地の場合は特定の宗教・宗派に縛られていないため、ご自身の信仰に合ったかたちで行えます。無宗教の方はこのステップを省略することもできます。
STEP7:遺骨の取り出しと墓石撤去
石材店が墓石の解体・撤去と遺骨の取り出し作業を行います。工事後は区画を更地に戻し、自治体に返却します(原状回復義務)。複数人の遺骨が納められている場合は、誰の遺骨かを確認しながら丁寧に取り出します。骨壺に入っていない場合(直接土に埋葬されている場合)もあるため、事前に石材店と確認しておきましょう。
STEP8:新しい供養先に納骨する
改葬許可証を新しい供養先に提出し、遺骨を納骨します。これで公営墓地の墓じまいは完了です。
公営墓地の墓じまいに必要な書類
改葬の手続きでは、複数の書類を異なる窓口から集める必要があります。書類の取得に時間がかかることもあるため、早めに準備を始めましょう。

ポイント:受入証明書は「供養先が決まってから」しか取得できない
受入証明書は新しい供養先に発行してもらうため、改葬先が決まっていないと入手できません。「とりあえず役所で手続きを先に済ませよう」と考えると書類が揃わず、申請が止まってしまいます。まず供養先を決めてから、他の書類の手配を進めるという順番が重要です。なお、書類の様式や必要部数は自治体によって異なります。必ず現在の墓地がある市区町村の役所に事前確認をしてから書類を集めてください。
公営墓地の墓じまいにかかる費用の目安
公営墓地の墓じまいにかかる費用は、状況によって大きく変わります。あくまで目安として参考にしてください。

公営墓地の場合、お寺の墓と異なり離檀料が発生しないため、その分費用が抑えやすい傾向があります。ただし、墓石の撤去費用や新しい供養先への費用は変わらず必要です。費用の幅が広いのは、石材の大きさ・区画の状況・新供養先の種類など、個々の条件によって異なるためです。
石材店の費用は複数社で比較する
墓石撤去・解体費用は、石材の大きさ・重量、区画の場所(重機が入れるかどうか)、地域の相場などによって異なります。同じ区画であっても、石材店によって見積もり金額が変わることもあります。複数社から相見積もりを取って比較することをおすすめします。公営墓地によっては指定業者制度があり、指定外の業者に依頼できない場合もあるため、管理事務所への確認が先決です。
【都立霊園限定】施設変更制度を活用できる場合もある
この制度は東京都が運営する都立霊園の使用者のみが対象です。市営・町営墓地には同様の制度は原則ありません。また、お寺や民間霊園への改葬には利用できません。
施設変更制度とは
都立霊園の使用者を対象に、現在の一般墓所を返還し、遺骨を都立霊園内の合葬埋蔵施設(合葬墓)に移す手続きを「施設変更制度」と呼びます。東京都公園協会が窓口となり、年に数回(5月・8月・10月頃が目安)募集しています。
都立霊園は全部で8か所ありますが、合葬埋蔵施設があるのは小平霊園・多磨霊園・八柱霊園の3か所のみです。また、各霊園の空き状況によって募集が停止される場合があります。たとえば2025年度の申請では、多磨霊園は募集停止となり、小平霊園・八柱霊園の2択となりました。利用前に必ず東京都公園協会の最新情報を確認してください。
通常の墓じまいと比べたメリット
項目 | 通常の墓じまい | 施設変更制度利用時 |
|---|---|---|
合葬埋蔵施設の使用料(通常64,000円/体) | 有料 | 無料 |
以降の管理料 | 有料 | 永年不要 |
改葬許可申請の手続き案内 | 自分で手配 | 管理事務所が案内 |
墓石撤去・原状回復費用 | 自己負担 | 自己負担のまま(補助なし) |
合葬墓の使用料と管理料がかからなくなる分、コストを抑えられます。ただし、墓石の撤去・解体費用は通常通り自己負担です。「費用補助がある」という情報を見かけることがありますが、撤去費用の補助は行われていませんのでご注意ください。
利用するための条件
この制度には明確な利用条件があります。承継者がいないこと(子・配偶者など、墓所を継ぐ方が1人でもいる場合は利用できません)、また移転先は都立霊園内の合葬墓のみ(お寺や民間霊園、散骨など他の供養先への改葬にはこの制度は使えません)です。
都立霊園の一般墓所を使用していて、「後継者がいないため合葬墓に変えたい」という方に向いた制度です。条件に当てはまるかどうか、まずは各霊園の管理事務所に問い合わせることをおすすめします。
公営墓地の墓じまいで注意すること
返還後の区画は再使用できない
一度返還した区画の永代使用権は消滅します。「やっぱり戻したい」と思っても、同じ区画を再び使用することはできません。返還前に親族全員が納得しているかを十分に確認してください。
複数の遺骨が納められている場合は事前確認を
公営墓地には、複数世代の遺骨がまとめて納められているケースが少なくありません。誰の遺骨が納められているかを事前に把握しておきましょう。遺骨ごとに改葬先が異なる場合(例:夫は永代供養墓、妻は別の霊園へ)、それぞれ個別に改葬許可申請が必要になります。また、骨壺に入らず直接土に埋葬されている遺骨は、石材店が丁寧に収骨しますが、すべてを完全に回収できない場合もあります。
供養先が決まらないと手続きが止まる
改葬許可申請に必要な受入証明書は、新しい供養先が決まってから初めて取得できます。「手続きをしながら並行して供養先を探す」という進め方では、書類が揃わず申請が止まってしまいます。必ず先に供養先を確定させてから、他の手続きを動かすようにしてください。
公営墓地によっては指定石材店がある
都市部の公営墓地を中心に、工事できる石材店を指定している墓地があります。指定外の業者に依頼しようとするとトラブルになることがあります。石材店を探す前に、必ず管理事務所に指定業者制度の有無を確認してください。
よくあるご質問
公営墓地の墓じまいに離檀料はかかりますか?
かかりません。離檀料はお寺の檀家関係を解消する際に発生するもので、公営墓地には寺院との檀家関係がないため、離檀料は発生しません。ただし、墓石の撤去費用・行政手続き費用・新しい供養先への費用は別途必要です。
改葬許可申請はどこの役所に行けばよいですか?
現在の墓地がある市区町村の役所で申請します。自分の住所地の役所ではありませんのでご注意ください。担当窓口は自治体によって異なり、環境課・市民課・生活環境課などとなっています。事前に電話で確認してから訪問すると手間が省けます。
墓地を返還する前に、全員分の遺骨を取り出す必要がありますか?
はい、返還前にすべての遺骨を取り出す必要があります。遺骨が残ったまま区画を返還することはできません。複数人の遺骨が納められている場合は、石材店に作業前に確認しておくとスムーズです。
石材店は自分で選べますか?
公営墓地によっては、工事できる石材店が指定されている場合があります。その場合は指定業者の中から選ぶことになります。指定業者制度がない墓地では、自分で石材店を選べます。複数社に相見積もりを依頼して比較することをおすすめします。
手続きにどのくらい時間がかかりますか?
親族の合意・供養先の決定・書類収集・石材店の手配・工事・納骨まで含めると、全体で3〜6か月程度かかるケースが多いです。書類の不備や石材店の工事スケジュール、供養先の空き状況などで前後することもあります。余裕を持って早めに動き出すことをおすすめします。
まとめ
公営墓地の墓じまいは、離檀交渉が不要な分お寺の墓とは異なりますが、改葬許可申請・書類収集・石材店の手配・原状回復といった手続き全体の手間は変わりません。余裕を持って準備を始めてください。
流れの要点を整理すると、次の2点が特に重要です。まず供養先を決めること(受入証明書がないと改葬許可申請を進められません)、そして石材店は相見積もりを取ること(公営墓地によっては指定業者制度があるため、管理事務所への確認を先に行いましょう)。
本当に面倒くさいので、早めに計画して早めに実行することをお勧めします。
墓じまい経験者 茨城県・63歳・女性
手続きの流れや費用について不安があれば、墓じまいの専門業者に相談することも選択肢のひとつです。わからないまま一人で抱え込まず、早めに動き出すことが大切です。






